【0限目】北海道弁の辞書(2021/9/20更新)
※北海道弁講座でご紹介した語句を随時更新しています。復習にお役立て下さい。
あ行 か行 さ行 た行 な行 は行 ま行 や行 わ行 その他
索引 | 北海道弁 | 意味 |
---|---|---|
あ行 |
あずましい | 落ち着く |
いずい | 都合が悪い 違和感がある | |
うるかす | (物を)水に浸漬させる | |
おっかない | 恐ろしい 怖い | |
か行 |
きしゃ(汽車) | 線路を走るもの(路面電車除く) |
こわい | 疲れた | |
さ行 |
サビオ | 絆創膏 |
しばれる | 冷え込む 凍りつく | |
しゃっこい | 冷たい | |
た行 |
とば(冬葉) | 魚の干物 |
な行 |
ないち(内地) | 北海道外(主に本州) |
は行 |
ひゃっこい | 冷たい |
ま行 |
ママさんダンプ | スノーダンプ |
もちょこい | くすぐったい | |
や行 |
ゆるくない | つらい 楽じゃない |
わ行 |
わや(わやくちゃ) | どうしようもない状態 混乱した状態 |
他 |
~さる | ~できる ~の状態になってしまう |
~べさ / ~だべさ | ~よね | |
~べ / ~だべ | ~よ | |
~さ / ~ださ | ~なんだよね | |
~べや / ~だべや | ~だろ | |
~べか / ~だべか | ~かな | |
~けさ / ~だっけさ | ~でしょ | |
~けや / ~だっけや | ~だろ | |
~しょ / ~しょや | ~でしょう / ~でしょうよ | |
~すれ / ~すれや | ~しろ / ~しろよ | |
~でない? | ~じゃない? | |
~かい? | ~かな? | |
~でないかい? | ~じゃないかな? |
【7限目】気持ちを表現する北海道弁[形容詞]
人間は、自分の心情を多様な方法で表現して、相手に伝えようとしますよね。表情や仕草、行動で伝えることもあれば、歌ったり踊ったり絵を描いたりして伝えることもあります。そして、言葉は人気なツールの一つです。
心情を表現する言葉を用いることで、相手にダイレクトに伝えられます。しかし、言葉で心情が伝わるには、条件があります。両者間で、その言葉が共通の認識であることが条件の一つです。気持ちを表現するために言葉を用いるのに、その言葉に含まれる心情を別の言葉で表現するのは非常に難しいことです。
今回ご紹介する言葉は、習得すれば非常に便利ですが、語感を掴むまでが難しい、そんな言葉たちです。
では、道産子の心の中を覗きに行ってみましょう。
【おっかない】恐ろしい 怖い
北海道だけではなく東日本で広く使われているようです。内地(4限目【内地】参照)でも通じてしまう方言はまさか方言とは思わないので、実は方言だったと知るとドキッとします。
この方言を使う地域の小学生は一度は口にしたことがある常套句、
「お金はおっかねぇ〜」
いやぁ、事実ですよね…。
あの紙切れとインクに振り回されてしまう人間たちといったら…サバンナのライオンさんも、北海道のヒグマさんもビックリでしょう。
【こわい】疲れた
【おっかない】続きだと誰もが「怖い」だと思いますよね。「怖い」は【おっかない】で【こわい】は「疲れた」。ややこしいったらありゃしない。
「膝がこわい」「腰がこわい」「なんかこわい」「あ〜こわいこわい」
誰も怯えちゃいませんので、ご安心を。
勿論、共通語の「怖い」の意味もあります。「疲れた」と差別化するためにも、「怖い」は【おっかない】と言うんです。
【ゆるくない】つらい 楽じゃない
別にズボンのゴム紐伸びきっちゃいませんよ?
「きつい」「つらい」はネガティブな気持ちがストレートに入りますが、【ゆるくない】はどこか奥ゆかしさがあるように感じます。
「朝からずっと雪投げ(※1)、ゆるくないねぇ〜」(※1 【雪投げ】除雪の意)
「ただキツイ」で終わらせず、「大変だけど頑張ろう」という開拓者たちの励ましあう姿が透けて見えるのは、私がエスパーの上級者だからでしょうか。
不思議と、肯定形の「ゆるい」という言葉は使われず、否定形の【ゆるくない】で使われる言葉です。
【いずい】都合が悪い 違和感がある
難易度高めの言葉です。
ムズムズ、モゾモゾ、モヤモヤ…何か決定的な問題の確信をもっているわけではないが、不満や不快感があるもどかしさのことです。
最頻出使用シーンはこちら。
「目にゴミが入っていずいわぁ」
目が痛くてどうしようもないわけではない、目を開けて見ようと思えば見えるけど、どこか違和感がある。
また、
「スキー靴の中で靴下がたごま(※2)さって(※3)、いずいわぁ」(※2 【たごまる】この場合は半分脱げてつま先でぐちゃっとなってる状態の意味 ※3 1限目【動詞+さる】を参照)
「いずいの説明難しくていずいわぁ」
のように使用します。
もともと「恐ろしい」という意味の「えずい」から転じたと言われます。「えずい」は、方言として今も各地に残っています。「言葉は生き物」とは良く言ったものです。生き物の進化のように形を変え意味を変え、そして時にはそのままの形を留め、実に神秘的です。
【あずましい】落ち着く
これまた難易度高めの言葉です。
居心地が良く、安心感があり、ストレスなく快適な環境にいると漏れ出る言葉です。
relaxでcomfortableな感じです。
概ね【いずい】とは反対の語感です。しかし、あくまでも反対語は【あずましくない】です。【いずい】は状態に対して、【あずましくない】は環境に対して用いられることが多いです。
そして、不思議と、肯定形よりも否定形の【あずましくない】の方がよく使われます。
「立食パーティーは、ほ〜んとあずましくない。しっかり食べられないべさ。」
まぁ、しっかり食べるための場所じゃないんですけどね。
【わや(わやくちゃ)】どうしようもない状態 混乱した状態
ざっくり言うと「やばい」です。
【わや】は、【わやくちゃ】の短縮形で、「くちゃ」は滅茶苦茶・無茶苦茶の「苦茶」です。複数品詞を持つため、多様なシーンで豊富に使用されます。
◇名詞 わや
「事故ってバイクがわやになった」
◇形容動詞 わやだ
「今朝の雪はわやだわ」
◇形容詞 わや
「あいつの部屋行ったんだけど、部屋の中がもうわや」
「わや!」のように、単独でも使います。
◇副詞 わや
「汽車(※4)がわや混んでる」(※4 4限目【汽車】参照)
副詞用法の場合は、「とても」という意味になります。「とても」の北海道弁は、【なまら】が有名ですが、【わや】は【なまら】よりも混み合った車内の無秩序感を表現することができます。【わや】は「やばい」、【なまら】は「すごい」のような感じです…笑
この言葉は、江戸時代に、関西から関門海峡を抜けて日本海回りで北海道にやってきた北前船が運んできたと言われます。積荷は商品だけではなかったということですね。
そして、もともとは、否定的・悲観的な意味の用法ですが、意味が拡張され肯定的に用いられることもあります。
「わや美味しい」「わやうける」
喜怒哀楽だいたい「わや!」でいけます。「やば!」と同じですね。
番外編ですが、「無茶苦茶」と「滅茶苦茶」の違い、考えたことありますか?
意味や用法に共通点は多いですが、あえて挙げるなら、「無茶苦茶」は原因に対して、「滅茶苦茶」は結果に対して、用いることでしょうか。
「お父さんの無茶苦茶な運転で旅行が滅茶苦茶になった」
これは自然ですね。
「お父さんの滅茶苦茶な運転で旅行が無茶苦茶になった」
少し違和感がありますよね。はい、いずいですよね。
ちなみに、【わや(わやくちゃ)】は結果に対して使われることが多いように感じます。
「お父さんの無茶苦茶な運転で旅行がわやだっけさ」
お父さんのドライビングテクニックが家族の市民権を得る日はもう少し先のようです。
道産子の心の中、少し覗き見れましたか?
7限目はここまでです。
次の授業でお会いしましょう!
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【6限目】北海道弁の肌感覚[形容詞]【もちょこい】【しゃっこい】【しばれる】
「雪国の人は、肌白くてキレイ」って言う方いらっしゃいますけど、雪は関係ないんでっ!むしろ「雪焼け」するんでっ!
本日は、道産子の肌事情ならぬ、肌感覚を表現する形容詞をご紹介します。
【もちょこい】くすぐったい
皆さんは、毛筆の先で背中を背骨に沿って撫でられたら、何て言いますか?
「こちょばい」「こしょばい」「こそばい」「こしょい」
色々、思うことはあるかと思いますが、
道産子は、
「やめれや、もちょこいべや」
って言います。
一方で、毛筆を持って悪い顔をしてるあなた、
「こちょばす」のはほどほどにね。
やりすぎると友達を失いますので。
ところで、皆さん、
この「もちょこい」の「こい」って一体何者なのか知ってますか?
「すばしっこい」「油っこい」「まるっこい」「しつこい」「ねちっこい」
実は、これぜーんぶ、「濃い」なんですね。
接尾語化して、性質や状態を強調する様を表現してるのです。
てことは、もともとは、
「もちょもちょもちょもちょもちょ~」
が言葉のはしりだったわけですね、きっと。
気のせいか、
「こちょこちょ」より「もちょもちょ」の方が、身をよじりたくなりませんか?
【しゃっこい】【ひゃっこい】冷たい
スキー場に行くと、泣き喚いてる、こんな子どもたちがいます。
「手がしゃっこいよぉー」
いつかの私ですね。
よく、親に手を揉んで温めてもらったものです。
瞬間的な冷たさも表現します。
「つめたっ!」に近いです。
背中に雪を入れられた時に「ひゃっこいっ!」
手に隠し持った雪を携え、背後からチャンスをうかがってるあなた、
やられてみるとわかります、人間関係まで冷やさないようにね。
【しばれる】冷え込む、凍りつく
こちら、「しゃっこい」よりも、さらに冷たさがグレードアップしている一単語でございます。
身体の芯にツーンと染み込むような、もはや「痛い」に近い寒さを表現します。
「今日の朝はしばれるね〜」
冬の朝の最頻出センテンスです、覚えておいて損はしないでしょう。
物にも使います。
自家製の漬け物を朝食に食べようと思い、物置小屋に取りに行ってひと言。
「うわっ、漬け物しばれてっけさ」
語源は諸説あります。
◇ 縛られる(しばられる)
体が縛られているような寒さ、ということですね。
寒さで血管が収縮し、血行が悪くなることで、十分な酸素や栄養が行き届かなくなり、老廃物が蓄積し、筋肉が硬くなる。動作が制限される様、まさに縛られるという表現も納得です。
◇ 柴割れる(しばわれる)
木が割れるくらいの寒さ、ということですね。
「おじいさんは柴刈りに」の「柴」、木のことです。そこのあなた、勝手におじいさんにゴルフ場のメンテナンスをやらせないで下さい、「芝刈り」じゃないんでね。
気温が低下すると、木に含まれている水分が、運動エネルギーが低下した水分子同士の水素結合によって隙間のあいた構造を作り、体積のより大きい氷になります。やがて、体積の変化に耐え切れなくなった樹幹が縦方向に割ける、「凍裂」という現象が誘因されます。ピシーっ、ピキーっ。
◇ shiver [ ʃívər ] (シィヴァ)
「寒さや怖さで身体が震える」、という意味の英単語です。シィヴァ、しヴぁ、しばぁる、しばぁれる、しばれる、的な感じでしょうか。んんーっ、ちょーーっと、無理があるんじゃあないでしょうかっ!
どれが正解かはわからなくとも、偶然か必然か、言葉と言葉に繋がりがあるというのは、なんとも神秘的ですね。
6限目はここまでです。
では、7限目でお会いしましょう!
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