紫わさび研究室

立ち止まった時、悩んだ時・・・日常にツーンとくる未知をお届けします

【3限目】便利な北海道弁【語尾】

本日もはじまりました、紫わさびの北海道弁講座です。

3限目は、語尾です。

 

語尾には、方言の顔とも呼べるような、とてもわかりやすい方言らしさが現れますよね。

もちろん、北海道弁にも特有の語尾があります。

そして、馴染みのない皆さんは、その種類の豊富さに驚くかもしれません。

 

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このステージかっこいいっしょ!これ手作りだっさー

基本形①【名詞+だべさ】

これが基本になっています。『〜だね』のように同意を誘う語感です。

「もう夏も終わりだべさ」(もう夏も終わりだね)

変形①-1【名詞+だべ】

最後の『さ』が落ちたパターンです。

「いやいや夏はこれからが本番だべ」(いやいや夏はこれからが本番だよ)

変形①-2【名詞+ださ(だっさ)】

真ん中の『べ』が落ちたパターンです。『〜なんだよね』と少しフランクな語感です。

「関係ないけど、今日私、生誕祭だっさー」(関係ないけど、今日私、生誕祭なんだよねー)

変形①-3【名詞+だべや】

 『さ』が『や』に変化したパターンです。 『〜だろ』のように男性が使う傾向にあります。

「それを言うなら、誕生日だべや」(それを言うなら、誕生日だろ)

変形①-4【名詞+だべか】

『か』に変わると、『〜かな』のように疑問文になります。

「…ところで、今日は何か特別な生誕を祝う日だったべか」(…ところで、今日は何か特別な生誕を祝う日だったかな)

変形①-5【名詞+だっけさ(だっけや)】

東日本で言うところの『じゃん』、西日本で言うところの『やん』に近しい語感です。最後の『さ』が『や』に変わるパターンは男性が使う傾向にあります。

「もう、それを言うなら『私の誕生日』だっけさ」(もう、それを言うなら『私の誕生日』だよ)

 

基本形②【動詞・形容詞+べさ】

『〜よね』のように同意を誘う語感です。

「誕生日プレゼントは、太古の昔からエアコンと決まってるべさ」(誕生日プレゼントは、太古の昔からエアコンと決まってるよね)

変形②-1【動詞・形容詞+べ】

最後の『さ』が落ちたパターンです。 

「おいおい、それはさすがにおかしいべ」(おいおい、それはさすがにおかしいよ)

変形②-2【動詞・形容詞+さ(っさ)】

先頭の『べ』が落ちたパターンです。『〜なんだよね』と少しフランクな語感です。

「ふっふ、実はさっき自分でエアコン買ってきたっさー」(ふっふ、実はさっき自分でエアコン買ってきたんだよねー)

変形②-3【動詞・形容詞+べや】

『さ』が『や』に変化したパターンです。『〜だろ』のように男性が使う傾向にあります。

「さすがに、さっき買ってきたはおかしいべや」(さすがに、さっき買ってきたはおかしいだろ)

変形②-4【動詞・形容詞+べか】

『か』に変わると、『〜かな』のように疑問文になります。

「でもさ、エアコンの設置って難しいべか」(でも、エアコンの設置って難しいかな)

変形②-5【動詞・形容詞+っけさ(っけや)】

『さ』の前に『け』がつくパターンです。『さ』が『や』に変化するパターンは男性が使う傾向にあります。

「暑いなら雪でも食べればいいっけさ」(暑いなら雪でも食べればいいでしょ)

 

その他【動詞・形容詞+っしょ(っしょや)】

「そうだよ、別に暑くないっしょや」(そうだよ、別に暑くないでしょうよ)

命令【〜すれ(〜すれや)】

「いいから黙ってエアコンつけれや」(いいから黙ってエアコンつけろよ)

疑問【〜でない?】【〜かい?】

相手に気持ちを寄せたニュアンスが含まれます。

「この部屋寒いんでない?」(この部屋寒いんじゃない?)

「この部屋寒くないかい?」(この部屋寒くないかな?)

「この部屋寒いんでないかい?」(この部屋寒いんじゃないかな?)

 

と、まぁ書きましたが、私は民俗学言語学の専門ではないもので、間違いがあればコメントでご指摘お待ちしております。

実は、北海道では、新築の家を除いて、エアコンのない家がほとんどなんですね。馴染みのないエアコンに憧れを抱く道産子たちの会話、この先が気になりますね笑

皆さんの地元には、どんな語尾がありますか?

 

もしご興味があれば、他の北海道弁講座も、こちらからどうぞ!

purple-wasabi.hatenablog.com

【2限目】便利な北海道弁【うるかす】

本日の授業は、こちら。

【うるかす】

何を思い浮かべますか?
使用シーンを想像してみましょう。

あなたは、北海道に住む友人の家に遊びに行きました。友人の手料理に舌鼓を打ち、楽しい夕食のひとときは、あっという間に過ぎてゆきます。食後の団欒もひと通り落ち着いた頃のことです。親しき仲にも礼儀あるあなたは、食べ終わったお皿を持って立ち上がりました。すると、一緒に立ち上がった友人はこう言いました。

「あーそれ、うるかしといて」

さぁ、今まさに流し台と向き合っているあなた、どうしますか?

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自慢の手作りステージです。

正解は、

【うるかす(潤かす)】 (物を)水に浸漬させる

用途は非常に限定的です。
浸漬させる対象は主に次の2つです。

①(お米を)うるかす

お米を炊く前に給水させることを指します。
お米1粒1粒の中に水が染み渡っていく様子を表現しています。

②(調理器具・食器を)うるかす

調理器具や食器についた汚れを水でふやかすことを指します。
調理器具や食器の表面と汚れとの間に水分子が入り込み、剥離していく様子を想像してください。


非常に興味深いことに、
『水に浸す』との違いは、語感に時間の奥行きがあることです。
水が入り込んで行った先の結果を【うるける】と言います。
長湯をして皮膚がふやけることを、『指がうるける』と表現します。


ところで、なして、こんなに使用シチュエーションを限定する言葉が生まれたのでしょうかね。
紫わさびの推測では、気候が関係しているのではないかと思います。
北海道は水温が低いため、現代のような温水が常備されていない環境では、お米の給水に時間がかかり、また、洗い物も一苦労です。
その苦労に対する想い入れが、この『うるかす』という言葉を生んだのではないでしょうか。
北海道弁、奥深いですね。
では、また次の授業でお会いしましょう。

こちらの北海道弁もどうぞ。
purple-wasabi.hatenablog.com

【1限目】便利な北海道弁【(動詞)+ 〜さる】

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自分で丸太を切ってヤスリをかけてニスを塗った思い入れのあるステージです。

キンコーンカーンコーン

キリぃーーーつ レイッ (ぺこり) ちゃくせーき

では、さっそく北海道弁の授業はじめていきます。

記念すべき1限目は

 

【(動詞)+ 〜さる】

 

この授業シリーズを始めようと思ったきっかけになった、世の中にあまねく広めたい言葉です。

意味は2つありますので、ご注意を。

 

① 〜できる

「こっちのペン書かさるよ」(こっちのペン書けるよ)

「このボタン押ささんないんだけど」(このボタン押せないんだけど)

とてもシンプルな可能用法です。

個人差はありますが、標準語よりも「ペン」や「ボタン」から距離をとっている語感があります。「書ける」こと「押せる」ことへの強い執着心を捨てて、自分のことは棚に上げて、無責任な気持ちになって、気軽に使用してみましょう。

 

②(意図せず)〜の状態になってしまった

意図しない行為によってもたらされた結果であることを表現する時に使用します。

『自分はそんなつもりじゃなかった』『だからこの結果は仕方がない』と、責任転嫁したいときは、非常に便利な表現ですので、ぜひ覚えておきましょう。

 

実際にしっかり責任転嫁するためには使用イメージを持つことが大切です。

例えば。

友達が書き直し3回目の履歴書を真顔で書いています。その隣であなたは鼻歌まじりにサンタさんのお絵描きをしています。そこに、開いてた窓から爽やかな風が吹き込んできて、サンタさんがヒラっとめくれました。咄嗟に、あなたは、赤色鉛筆を握った右手で紙をおさえにいきます。するとどうでしょう、【志望動機・自己PR】にまぁまぁの太さと勢いの赤色の斜線が引かれているではありませんか。友達はあなたをまっすぐに見ています。さすがのサンタさんも気まずそうにしてます。

 

「書かさっちゃった、ごめん♡」

 

はい、では、次の例です。

よく晴れた夏の午後、庭で重量挙げを楽しんだあなたと友達は、喉が乾いたので、近所の自動販売機に向かいました。友達は、自動販売機の前に立って、やっぱスポドリかなぁ、いやでも炭酸もいいな、なんて汗をぬぐいながら、楽しいお悩みのひとときを過ごしています。そこに、自動販売機を背にして立っているあなたの目の前を大きなコンドルが横切りました。思わず、後ろによろけたあなたは、背中が自動販売機に当たってしまいました。するとどうでしょう、ガコン、ほっかほかに温まったコーンポタージュが勢いよく滑り出てきたではないですか。友達は、静かに自動販売機を持ち上げてあなたを見ています。

 

「え、ちがっ、押ささっちゃったんだってっ!!」

 

皆さん、しっかり使用イメージ掴めましたか?

学校で、職場で、家庭で、責任転嫁したいときは、ぜひ使ってみて下さい。

1限目は、ここまでです。次は、2限目でお会いしましょう。

 

こちらの北海道弁もどうぞ!

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